飯舘村の母ちゃんの苦悩する姿も、嘆く声も、怒りの言葉さえも、なぜだろう、私を温かく包み込んでくれる。
放射能が、故郷や営々と続いてきた暮らしを奪うなら、
今目の前にある土をひたすら耕し、種を蒔き、
そして自らも種となって、飛来したところで根づこうとする。

その母ちゃんたちの姿が、飯舘村の自然そのものだ。
原発事故を引き起こしたのが、人間の最大の愚行であるなら、
飯舘村の母ちゃんたちは、自らが寄って立つ自然の叡智で
闘い続けている。

それでも今日を生きよう。母ちゃんたちの姿を見ていたら、

悲しくて苦しいのに力が湧いてくるのだ。

纐纈あや(映画監督)


泣ける程に美しい原風景。
飯館村に帰れない母ちゃんたちの姿は、私たちの姿。

日本人のDNAを源に強く持った母ちゃんたちが、
そのルーツに帰れない姿。

それは同じ日本人である私たちが帰る場所を失ったことと等しい。
還る場所を奪われたのは、実は奪った者自身でもあるのだから。

安藤桃子(映画監督)


「先祖が泣いてっぺ」荒れ果てた土地を前にした言葉の痛み。
あらゆる命に声をかけ、亡き人々を思いながら、聞こえぬ声に
寄り添うように生きてきた人たちの心。
原発事故が奪ったものは、住居や家族関係だけではない。
前に進むために笑い、「放射能を忘れるために」汚染された
土地を耕し続ける母ちゃんたちの物語が、
原発を語るすべての
人に届いてほしい。

寺尾紗穂(ミュージシャン・作家)


「農業は芸術なんだよ」と語る榮子さんの笑顔が忘れられない。
山形の農村で生まれ育った私もそう思って生きてきた。
そのアートな指先が求めるものを奪う権利は誰にもない。
私たちの富と引き換えに犠牲にしたものを測る想像力を
日本は失ってしまったのだろうか?
今を生きるという自然だったはずの人々の努力の
なんと激しく重いことか。榮子と芳子を私も応援していく。

渡辺えり(俳優・劇作家)


敬称略・順不同