菅野榮子(かんの・えいこ/写真右)さんは79歳。
孫に囲まれた幸せな老後を送るはずが、
福島第一原発の事故で一転する。
榮子さんが暮らす福島県飯舘村は全村避難となり、
ひとりで仮設住宅で暮らすことになった。

支えは親戚であり友人の78歳の
菅野芳子(かんの・よしこ/写真左)さんだ。
芳子さんは避難生活で両親を亡くし、
ひとりで榮子さんの隣に移ってきた。
「ばば漫才」と冗談を飛ばし、互いを元気づける、
2人の仮設暮らしが始まった。


榮子さんの信条は、食べるものは自分で作ること。
ふたりで畑を耕し、トマト、キュウリ、芋、大豆、
大根、様々な作物を収穫する。
かぶや白菜の漬物、おはぎ、にんじんの胡麻和え・・・、
「おいしいよ」と笑顔で食卓に手料理を並べる。
村の食文化を途絶えさせたくないと、
昔ながらの味噌や凍み餅(しみもち)の作り方を、
各地に出向いて教えるようにもなった。


飯舘村では帰村に向けた除染作業が行われている。
だが高い放射線量、変わり果てた風景・・・。
ふたりは先の見えぬ不安を語り合い、
泣き笑いながら、これからを模索していく。


監督の古居みずえは30年近くパレスチナの取材を続けている。特に女性や子どもに焦点をあて、『ガーダ パレスチナの詩』『ぼくたちは見た -ガザ・サムニ家の子どもたち-』など個人や家族に密着したドキュメンタリー映画を発表してきた。
本作でも、故郷を奪われた哀しみを抱えながら、
たくましく生きる女たちを丁寧に見つめていく。

原発事故から5年、未だに10万人が避難生活を続ける。
避難の長期化による孤立や分断が深まるなか、
私たちに何ができるのか。
本作を通じ、ともに“これから”を模索してほしい。